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「あっ・・・あ・・っ・・・あぁッ!」
目に一杯の涙をため込み、俺と目が合った瞬間にそれは決壊したかのように零れ落ちた。
「会いたかったッ!・・・会いたかったんだ・・・君にッ!!!ずっと・・・ずっと待っていたんだッ・・・!!!」
縋りつくように泣きだした目の前の彼女に、俺はかける言葉が見つからない。
俺はウィズが苦しんでいるときに何をしていた。
彼女が助けを求めている時に何を考えていた。
もっと早く動き出していれば。
兵舎の前に出た時なりふり構わず探していたら。
そんな考えが頭に湧き出し、心の深いところに沈殿し、俺を蝕んでいく。
「何も見えなくなった時に、君の顔が浮かんだ、痛みよりも、君の顔が見られなくなることが怖かったんだ・・・」
―――やめてくれ。
「なんども絶望し、心が挫けそうになった、痛みで我を失うかと思ったッ!しかし!その時に、いつも君のことが頭に浮かんだんだッ・・・君の声が、顔が、仕草が、匂いが、私を繋ぎ止めてくれたんだッ!」
―――やめてくれッ!
「君の・・・おかげだ」
「やめろッ!」
「・・・え?」
沈殿した黒い感情は火山のように吹き上がり、気持ちは言葉となって口から出ていった。
「俺はッ!間に合わなかった・・・ッ!ウィズが・・・苦しんでいる時に!!能天気に酒飲んで!飯食って、へらへらして・・・」
気持ちの整理がつかない。
自分でもおかしなことを言っているとわかっている。
ウィズが拷問されたのも知ってたけど、俺はそのことをそこまで重く受け止めていなかった。
軽い気持ちだったわけじゃないが、それでも、俺は自分の行動に納得なんかできない。
俺を助けてくれた恩人がこんな・・・。
「―――もういいんだ・・・もう・・・・私はそれでも君に感謝したいんだ」
泣く子をあやすかのように、今度は俺の頭を抱きかかえ、髪に指を通すウィズ。
俺はそんなウィズに縋りつくように泣いた。
本当に泣きたいのは俺じゃないはずなのに。
ウィズのやさしさに甘えてしまった。
「君がそういってくれるだけで私は救われるんだよ、不謹慎なことを言ってしまうと、君が私なんかのために泣いてくれるだけで、私としてはこの拷問を耐えきった意味があるとさえ思えてしまうんだ・・・本当に君のお陰なんだ・・・だからもう泣かないでくれ少年」
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