22人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「宮本さんってさ、普通の人とは違うでしょ。というより、あの人って何なの?」
「もう分かったの?」
「そりゃあ、わかるよ。精霊の声は聞こえるようになったし、村正の扱いだって上達していってるし。短期間にここまで成長するなんて、普通の人間にはありえないことでしょ。それで、どういう種族なの?」
ダイアンは緑茶を彩と自分の茶碗に注ぎ、急須を置いた。
「それは個人情報だから、私から話すことはないわ。」
彩は困った顔を見せた。
「でも、これから危険な目にたくさん合うかもしれないし、そうなった時の対処のためにも知る必要はあると思うけど。」
「ダメよ。これは、武士の家族との約束なの。いつかあなたに話すわよ。」
「約束か…。それなら、仕方ないか。」
彩はお茶を口に入れた。
「それは諦めるから、何かあった時はどうすれば良い?」
ダイアンは少し考え、口を動かした。
「自分で考えなさい。でも、いくら考えてもどうにもならない時は、私か、あの子の父親に電話しなさい。」
「でも、電話がつながらない時は。」
「それはその時よ。あなたが対応する必要があるのよ。」
「対応する必要がある…か。やっぱり、そうなるか。」
諦めたように彩は言った。
「あのね、何が起こったとしても、それはあなたなら乗り越えられるから与えられるのよ。大丈夫よ。あなたならできるわ。」
(だから、自分でなんとかしなさいってことか…。)
彩はため息をついた。
「そういうわけだから、次からはあなたと武士だけで行きなさい。」
祖母の言葉に、お茶を吹き出しそうになった。
何度か咳き込み、ハンカチで口元を拭いた。
「い、いえあの、そっ、それは、あの。冗談でしょう?」
彩は祖母の瞳を見つめた。
「本当よ。いつまでも私に頼っていたんじゃ、上達しないでしょう?それに、私もいろいろ忙しいのよ?」
「 え、ででででも、私もまだまだだし、宮本さんだって、もっと手助けが必要だし。二人だけで怪我とか、命落とすなんてことがあったら大変だし。」
彩は必死に口を動かした。
「あなたは案外しっかりしているのだから、 そんなことにはならないわよ。それに、行く前にはちゃんと保護をかけるから。」
「でも、万が一があり得るわけで。」
ダイアンは笑顔だが、瞳には意志の強さが宿っていた。
「私がそんなこと、許すわけないでしょ。」
その言葉に、彩は確信した。
最初のコメントを投稿しよう!