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お名前は、佐倉とめさん。七十九歳。
八十までは行っていなかったけど、高齢である事は確かだった。
「ご家族の方はいらっしゃらないですか?」
名前は、とめさんの名前が書かれただけだった。
「あぁ。じいさんも他界してもたし、息子も私より先に死んでもうてなぁ」
寂しい返事が返って来た。
聞いているだけで、切なくなった。
「そうでしたか……」
巡回連絡カードをファイルに入れる。
が、しかし、だ。何かあった時、ご連絡先が必要だ。
「あの、すみません。災害時とか何かあった時の、ご身内の方の連絡先教えて頂けませんか?」
「え? 何それ?」
きょとんとするとめさんに、私は説明した。
「万が一ですね、震災とか災害があった際、こうしてカードを記入して頂く事によって、身内の方に連絡しやすくなるんですよ」
私は簡単に説明した。
おばあさんは、軽く首を捻った。
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