2/14
638人が本棚に入れています
本棚に追加
/569ページ
 お名前は、佐倉とめさん。七十九歳。  八十までは行っていなかったけど、高齢である事は確かだった。 「ご家族の方はいらっしゃらないですか?」  名前は、とめさんの名前が書かれただけだった。 「あぁ。じいさんも他界してもたし、息子も私より先に死んでもうてなぁ」  寂しい返事が返って来た。  聞いているだけで、切なくなった。 「そうでしたか……」  巡回連絡カードをファイルに入れる。  が、しかし、だ。何かあった時、ご連絡先が必要だ。 「あの、すみません。災害時とか何かあった時の、ご身内の方の連絡先教えて頂けませんか?」 「え? 何それ?」  きょとんとするとめさんに、私は説明した。 「万が一ですね、震災とか災害があった際、こうしてカードを記入して頂く事によって、身内の方に連絡しやすくなるんですよ」  私は簡単に説明した。  おばあさんは、軽く首を捻った。
/569ページ

最初のコメントを投稿しよう!