警察学校卒業旅行

1/12
637人が本棚に入れています
本棚に追加
/569ページ

警察学校卒業旅行

「あ、これめっちゃ可愛いやん」 「ホントやー」  私、吉沢祥子は本日、サービスエリアの売店で、同期の中村奈保さんと一緒に、ご当地キティちゃんを眺めていた。  今日は、警察学校の卒業旅行。  私、吉沢祥子は岡山県倉敷市出身。春に大学を卒業して、隣の兵庫県警に入った。  半年の警察学校での初任科期間はとても、きつかった。例えるなら、戦争中、太平洋戦争に行った兵隊さん達も、こんな生活を送っていたのではないだろうか。  三分の一は初任科過程で辞めて行く。  きついとは聞いていたし、軍隊に入ったと思えと警察官だった父によく言われていた。その覚悟はしていたが、やはりきつかった。  やっと初任科過程が終わり、卒業式を終え、警察学校の卒業旅行。  でも楽しみにしていた訳ではない。  それはどのような様子なのか、今から説明しよう。    売店でソフトクリームを中村さんと一緒に購入して、食べていた時だった。 「お前ら、どけー、どけどけー!」  そんな大声を上げたのは、同じく同期の内田直人。やたらと背が高く体格がいい。警察官向きの男だ。
/569ページ

最初のコメントを投稿しよう!