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シャワーを浴び、スーツに身を包んだ俺を彼女が出迎えてくれる。
君の手には二つのワイングラス。
赤い芳醇な香りを放つ液体が揺れている。
「今日はあなたが生まれた日よね? お祝いよ」
「ああ・・・・・・。覚えてくれてくれていたのか。ありがとう」
受け取ったグラスを傾け、心地良い音色を奏でる。
「まるで恋人のようだな」
「ええ」
君は柔らかく微笑み、俺の瞳を見つめる。
「でも忘れないで。あなたは私の犬だってこと」
俺はワインを喉に流し込む。
ほろ苦く甘い、叶わぬ恋の味がした。
ー完ー
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