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「あれ?平成載ってないよ?」
「ほんとだ。カプセルにはちゃんとA-02型って書いてあったよね?」
「でも、これに載ってないってことは...ヒロ、見間違えただろ?」
「そんなことないよ!ちゃんと02って書いてあったもん!!」
「でも、元号が二文字ってことは01型とかの時代区分だよねぇ」
「あ、健太の班のカプセル、確か01型だった!マニュアル借りてくる!!」
どうやら、俺の時代は古過ぎてこのマニュアルには載っていなかったらしい。日焼けした少年が理科室を飛び出していく。目の前のやりとりは俺らの子供の頃と何にも変わらない。
「ワープドア間違えんなよ!健太1組だから青のヤツだからな!」
「C-02通路、3組の山崎が反重力スーパーボールぶちまけたせいで磁場不安定だから気をつけて!」
…前言撤回だ。めちゃくちゃカッコいい用語が飛び交っていて、なんだか悔しい。
「あの、聞きたいことがあるんですけど」
坊主頭の少年が、ハキハキした様子で喋る。もう警戒はされてないらしい。
「なんだ?わかる範囲でなら平成の...」
「大人ですか?子供ですか?」
「あ、俺か?俺は大人だ。25」
少し拍子抜けして答える。すると、眼鏡の少年が拳を掲げガッツポーズをする。
「ほらね!やっぱり大人だったじゃん!今の時代とは平均身長が違うんだって」
どうやら賭けをしていたらしい。まあ、酒を買う度に年齢確認をされるくらいには童顔だし、間違えるのも無理はない。しかし、坊主頭の少年はまだ逆転のチャンスを探しているようだ。更に質問してくる。
「じ、じゃあ!お兄さんなんの就職してるんですか!!」
「......就職は...してないけど...」
「ほらぁ!!!」
待て待て、ほらぁ!!!じゃない。別にそれは関係ないだろう。眼鏡の少年も逆転されたような顔をするんじゃない。
「ごめん遅くなって!間違えて緑のワープドア通っちゃって」
日焼けした少年が帰ってきたので、二人のフリーターは大人か論争は終結した。
俺は、無駄に心に傷を負った。
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