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俺と三人の間に、妙な沈黙が流れる。
半年前に振られた元カノに「目付きが怖い」と言われたことを思い出した。総合の授業の防犯教室で散々「知らない人にはついていかない」と指導されている小学生からしたら、俺みたいな見た目は典型的な不審者だ。まずい、このままでは子供達に通報されてしまう。どうにか打開しなくては。俺は、満面の笑顔で彼らに話しかける。
「初めまして。君達、名前は?」
やらかした。不審者セミナーがあれば教科書に載るレベルの100点満点解答だ。少年たちの顔が引き攣っている。
いや待てよ。
この状況、どう考えても俺が被害者だ。というか、両腕を拘束されて台に固定されてる時点で何言っても怖いわ。俺は心の中で頭を抱える。
すると、何なら三人は話し合いを始めた。壮絶なじゃんけん大会ののち、眼鏡をかけた少年が他の二人にせっつかれながら、プリントを片手に俺の足元までやってくる。
「は、初めまして。6年2組の沢木慎二と言います。この度は、超時空人類種生命維持装置A-02型の誤作動によって多大なご迷惑をおかけしたことを、関係者一同深くお詫び申し上げます。只今より、その復旧作業を行いますので、暫しご協力のほどを、よろしくお願いします」
どうやらプリントに書かれているらしいことを棒読み口調で読み上げ、ぺこりと頭を下げる。最近の子は意外と礼儀正しい。
...そうじゃない。いや礼儀正しいのは事実だが。全く意味がわからない。質問したいが、どこから聞けばいいのかすらわからない。
返答に悩んでいると眼鏡の少年が続ける。
「あなたに起きたことを順を追って説明します。少し長くなりますが、お付き合いください」
眼鏡の少年が二人の元に戻って、今度はぶ厚めのファイルを持ってくる。これは長くなりそうだ。
「あなたがいるこの世界は、未来です」
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