春を待っていたんだ

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『いつまででも待ってやれたんだぞ。』 『春になったもん』 にーちゃのいもーとがいいんだもん きらきらと枝の雪が溶け、ポタポタ雫が落ちる。陽光の燦めく空に薄く虹がかかってる。 ネーチャン。 ダメだろ。ネーチャン。ほら前みろよ。 虹の橋だ。 いつものあんたなら脳天気に笑うだろ。 「デメはあの橋を渡るのね」ってさ。 ちーきょ、ちー、きょ、ぴぃー 春を練習するウグイスが鳴く。 カカカッとデメもなく。お尻をふりふりするイモウトを前脚でドスンと押さえた。 はしゃぐなって。 ネーチャン。なあ。ネーチャン。ほら、なあ、虹が消えちまう。あんたの好きなきれいなもの見逃しちゃっただろ。だめじゃん。 しょうがねーなあ、まったく。 待っててやるから。 たくさんきれいなもの愉しんで、 あんたはゆっくりきなよ。
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