春を待っていたんだ

7/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
和尚さんのお経があいつを仏さまに変えていく。 死んだらみぃんな仏さま。 ネコもシャクシも仏さまになるって和尚さんは説く。 だからそんなに泣くなよネーチャン。 『にーちゃ。』 背筋をピンと伸ばし行儀良く鎮座する俺の顎先に、ごつんごつんと額から突っ込んでくる。 あいつからの怒濤の頭突き。そこからのスリスリは尻尾の先まで続く。くるりと反転し、目を細めてまたごつん。 ぐるぐると喉を鳴らし躰をすり寄せてくる。 『にーちゃ。』 ここからまた七七日。 知ってんだろネーチャン。容れものが無くなった俺たちは、いつだってどこにだってあらわれるし、だれにだってなれるんだ。 目が溶けちまうよ。もう泣くな。こいつがどれだけ安らかに逝ったか知ってんだろ。 『にーちゃ。急いで来たの。』 きらきらと大きな金色の瞳で髭を震わせる。 わかってるって。お前が俺を大好きなことくらい。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!