春を待っていたんだ

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春を待っていたんだ

今日は特別な日だ。 ちゃんとそれをわかっていて、太陽は顔を覗かせている。 雪深い山道を慎重に車は走る。 後部座席を写すルームミラーには籐の籠を抱えたネーチャン。 鼻を真っ赤にし、目をしばたたかせては俯く。 目の弱いネーチャンには、タイヤから巻き上げられて、キラキラ反射する雪さえ眩しすぎる。 抱える楕円の籠の中。 フリージア、スイートピー、チューリップ、カレンデュラ、トルコキキョウ。 イロトリドリなパステルのヒラヒラふりふり。 ふわふわのあいつに似合ってる。 一本だけの桃の枝は凜と咲き誇る。 メヂカラなあいつに似通ってる。 それからやっぱり入れちゃうんだ。 グリーンだけど、すぐばれちゃうよ。 気持ちはわかるけどね。 あいつの大好物だから。 花束に紛れ込んだアスパラガス一束。
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