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「サクラ?」
呼ばれて隣を向くと、
同じく人にもみくちゃにされながらも涼しい顔をしているハルがいた。
「ハル!」
「サクラが購買なんて珍しいな」
私たちは横から後ろから人に押されながらも、
会話を続ける。
「今日はたまたま…」
「あ、
あそこ開いた!」
そう言ってハルは一瞬空いた人垣の隙間めがけて身体を滑り込ませた。
私もすかさずそれに続く。
パンは半分近く売れていたが、
種類はまだ選べるくらいあった。
「おばちゃん、
俺、
焼きそばパンとソーセージパンとメロンパンね!」
ハルは素早く注文してお金を支払い始める。
私も彼に倣うことにした。
「私はベーコンエッグパンとクリームパンお願いします!あと牛乳も!」
無事、
注文を終えパンを腕に抱えながら私たちは購買の人混みを抜けることができた。
二人ともボロボロになった身体を引きずりつつ、
教室へと向かう。
「昨日、
渡り廊下で何話してたの?」
教室まで待てなかったのか、
ハルはソーセージパンをかじりながら話しかけてきた。
心なしか彼の表情は少し硬い。
私は山下さんとの会話の内容を伝えるべきか迷った。
しかし、
隠してもしょうがないと思ったので、
正直に話すことにした。
「はあ?俺が好きなのはトモだけだ。
何を勘違いしてるんだ」
私の話を聞き終えたハルは、
開口一番、
呆れながら言った。
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