第一章 サクラ-2

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「…まあ、 普通はそう思わないからね」 ハルのあきれ返った顔に胸が痛まないわけではなかったが、 それを表に出すことははばかられた。 「ま、 男同士だしな」 ハルはメロンパンをかじりながら面白くなさそうな顔をしている。 教室に着く前に、 パンを食べ切ってしまうのではないだろうか。 「俺がトモに告白したら、 迷惑だと思う?」 ハルは真っ直ぐに私を見た。 その目は真剣だ。 怖いが、 目をそらすことは許されないと感じた。 どう答えるべきか考えあぐねている私を見て、 ハルは苦笑した。 「サクラ、 正直すぎ。 トモを困らせるって、 俺もわかってるよ」 ハルは私の頭を軽くなでた。 ポンポンと軽く。 突然の出来事に何も言えない私とは対照的に、 彼は何事もなかったように残りの焼きそばパンを食べ始めた。 ああ、 そうだ。 こいつは純粋な乙女心を天然でもて遊ぶようなやつだった。 少しでもときめいてしまった自分が情けない。 ハルがパンを全部食べてしまったので、 私たちは教室ではなく中庭に行くことにした。 中庭は日差しこそ差さないが、 秋のこの時期は気持ち良い温度になっている。 私たちは中庭を突っ切るように伸びる渡り廊下の階段に腰を下ろした。 昼休みのため校舎からは明るい人の声が聞こえる。
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