第一章 サクラ-2

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席に着くと、 私たちは早速ワインで乾杯した。 私は女性におすすめだという白のスパークリングワイン、 森村さんはロゼを頼んでいた。 話をしたのは結婚式以来だが、 やはり森村さんは話しやすかった。 聞き上手でもあり話し上手でもある。 それに、 笑ったときにできる目尻の皺が、 暗がりでは一層素敵に見えた。 もともと彼との食事にそれほど乗り気ではなかったが、 今ではどうしてこんな素敵な人が、 今まで結婚していなかったのだろうか不思議に思うくらいになっていた。 料理は創作料理というくらいだから、 フレンチなのかイタリアンなのか和食なのかわからない様々なテイストを入れ込んだものだった。 こうした店でよく出てくる前菜のカルパッチョにも、 カレーの味付けがされていて驚いた。 メインに鶏肉に少し酸味のあるソースがかかった料理が出た。 ソースが鶏肉に合っていてとてもおいしい。 おいしい料理とワイン、 もしかしたら付き合うかもしれない男性との楽しい会話に私はふわふわと浮かれていた。 メインが終わったあたりで、 森村さんの携帯が鳴った。 彼が席を立っているあいだ、 私はワインを飲みながら先程の香水について考えていた。
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