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あの女子社員がつけていた香水の香り。
私は香水をつけないから、
知り合いの誰かがつけていたのだろう。
しかし、
いつ、
誰が?そして私はなぜこんなにあの香りが気になるのだろうか。
*
あの香りがする
甘くてやわらかい 苦くてセクシー
街でたまに出会う
甘くて優しい、 苦くて切ない
ああ、
彼だ。
*
急がないと、
授業に遅れてしまう。
私は生徒会の資料を届けに職員室に寄った後、
化学室へと早足で向かっていた。
職員室と化学室は別々の校舎にあり、
渡り廊下を通って行かなければならない。
この渡り廊下が割と長いのだ。
急いでいけば間に合うが、
化学教師はいつも五分前には教室に来てしまう。
職員室で担任に捕まらなければ、
こんなに急ぐことはなかったのに。
担任の男性教師は最近、
娘が生まれたらしくその話をしたくてしょうがないらしい。
教師、
生徒かまわず娘の写真を見せまくっている。
確かに赤ちゃんは可愛いと思うが、
時と場所を考えて欲しい。
これが親ばかというやつだろうか。
廊下の反対側から、
見知った人が歩いてくる。
あの長い髪は、
山下さんだ。
彼女の両脇には女の子たちがいて、
楽しくおしゃべりをしている。
彼女たちはそれぞれボブヘアとセミロングの艶やかな髪を、
笑う度に揺らしていた。
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