1 魔界から来たおとこ

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1 魔界から来たおとこ

 その信号を感知したとき、オペレーターは何かの間違いだと思った。  それは、完璧に人のかたちをしていた。そのように、見えた。性能の良い監視カメラは、それが、成人男性の体格であることも同時に伝えた。  その穴といえば、地球にいるどの動物とも違うかたちをとった魔物を吐き出す穴だと思っていたので、監視室はざわめいた。 「たまたま近くにいた者を、穴から出てきたと勘違いしてとらえたのではないか?」 「あの穴に生身で近づくひとなんているものか」  成人男性の形のその影は、人間が歩くのと同じ速度でゆっくりと歩きだして、そして、カメラにはっきりと映った。 「……魔物だ」  誰かが思わずつぶやいた。  その瞬間、監視室は慌ただしくなった。非常信号を出し、戦士たちを専用アプリで召還した。 *  金曜の夜、戦士たちは思い思いの場所にいた。あるものは、レストランで少しだけいつもより良いものを食べ、あるものはさっさと帰って撮りためたアニメを見はじめた。またあるものはまだ仕事をしていた。  そんな中で、来られるものがほどなくこの東京魔界対策本部のロビーに集まってきた。  部長である未鈴丈史(みれいたけふみ)が点呼を取る。     
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