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はいどうぞ、と目の前に置かれたのはココット皿に入ったチョコレートケーキだった。
「うそ、何これ手作り……?」
呆然と呟いて見つめた先で、司が照れ臭そうに笑う。
「うん。今、お店で出してるやつでね。美味しかったから、店長にレシピ聞いて作ってみたんだ」
テレテレと頭を掻きながらの告白に、泣きたくなるくらいの嬉しさと幸せを噛み締めながら、隣に座っている司に抱きつく。
「わっ、ちょっと颯真」
危ない、と口先だけで怒る司の声がいつになく優しい。
「ありがと。めちゃくちゃ嬉しい……」
「…………冷めちゃうよ」
喜びのあまり顔中にキスを降らせていたら、司の照れた声がそう呟く。
ありがとう、と唇にキスを贈ってフォークを取り上げて──イタズラを思い付いてむふふと笑った。
「…………司」
「んー?」
「せっかくだからさ」
「ん?」
キョトンと首をかしげた司にフォークを手渡す。
「………………もう。あまえんぼめ」
意図を察して首から耳まで真っ赤に染めた司が、甘く蕩けた声で怒る。
真っ赤な顔のままでぶつくさ言いながらココット皿を手にとった司が、フォークで一口分切り取って差し出してくれた一口を、雛鳥よろしく口に運んでくれるまで大人しく待つ。
「…………はい」
「…………」
オレの口の前まで持ってきて、だけどオレが口を開かない理由に気づいた司の頬がこれ以上ないほど色づく。
「…………ぁーん」
渋々絞り出された声に満足して、フォークを自分から迎えにいったら
「…………おいしい……これ、チョコレートケーキかと思ったら、フォンダンショコラなんだ……」
口の中に広がる甘さとほろ苦さと、滑らかに溶けるガナッシュに驚いた。
「嘘、これ、ホントに手作り?」
「…………ビックリした?」
「するよ! めちゃくちゃ美味しいよこれ!」
「そりゃそうだよ。お店の味なんだから」
真っ赤な顔のまま誇らしげに笑う司が、可愛すぎて愛おしい。
フォークを持ったままの司にもう一度抱きついて、危ないでしょ、と怒られながらもグリグリと司の胸に顔を押し付けた。
「むちゃくちゃ嬉しい」
「……」
「今までもらったプレゼントの中で、一番嬉しい」
「……そりゃよかった……」
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