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照れ臭い顔のままでもごもご呟いた司の唇に唇を押し付けて、泣きそうになった自分を誤魔化す。
まさか手作りだなんて思ってもみなかったし、ましてやめちゃくちゃ美味しいだなんて、オレはなんて幸せ者なんだろう。
「ん、ふ……っ、そぅま」
せっかく温めたのに冷めちゃう、と控え目な文句が途切れ途切れに聞こえて、ようやく唇を離す。
昂ったままに貪った司の唇はいつもより赤くて、唾液に濡れて艶やかに光っている。
誘われるようにずい、と迫る。
「……つかさ……」
「ゃ、……まっ、て……食べないの?」
「食べる」
「だったら……」
おろおろと逃げようとする司の髪から、さっきまでは気付かなかった甘いチョコレートの匂いを嗅ぎとったら──抑えは効かなくなった。
「司も食べる」
「ちょ、んンッ」
何か言おうとしたらしい唇を塞いで、舌に残る甘みを司に分け与えるように舌を絡めた。
幸せなバレンタインを二人がどう過ごしたのか──。それは机に放置されたフォンダンショコラだけが知っている、甘い甘い秘密。
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