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「何を飲ませた!」
動揺する男をフッと笑う女。
「一緒にいいところに行けるお薬よ」
「ふざけるな!」
男は口から血を噴き出し、体がガクガクと痙攣しはじめた。
「毒か……? そんな……。俺は死ぬわけにはいかない……。春には、子供が生まれるんだ……」
「平気だよ。あんたよりいい男なんて、この世に腐るほどいるもの。すぐに、いい男が見つかるわ」
男は呼吸を荒げ、喉を掻き毟りながら女を睨んだ。
「そんな男を愛してしまう私もまた、同類という事……」
男の口から絶え間なく血が流れ、体を小さく痙攣させながらゆっくりと頭を垂らしていき、そのまま床につけた。
その姿は、男が女に土下座をしていた時と同じ格好で絶命していた。
女は男を見て、一筋の涙を流した。
同時に口からは血が零れ、女は下腹部を優しく撫でた。
「ごめんなさいね。あなたにも雪を見せてあげたかったのに……。けれど、母も父もずっと一緒だから、いいでしょう?」
持っていた小瓶の残りを飲み干すと、女は真っ赤に染まりながら男の横で絶命した。
外では、相変わらず雪が降り続いている。
けれど、その雪はいつしか止み、窓辺の雪も消えて無くなるだろう。
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