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淡雪の如く
木造の家々が建ち並ぶ一角に、かつて遊郭だった二階建ての建物があった。
時が流れても、そこは一階で女と酒や料理を楽しみ、二階では馴染み客だけがお気に入りの女と一晩を共にできる場所となっていた。
ある冬の事。
二階の部屋の窓辺で、女がタバコを咥えながら、灰色に染まる空を見上げていた。
「今にも雪が降りそうじゃないか」
女はタバコの煙を吐き出し、部屋へと向きを変えると、悲しげに視線を落とした。
部屋には女の他に、もう一人いた。
この部屋に来てからずっと畳に頭を擦りつけ、女に向かって土下座をしている男。
何て無様……。
女はそう思っていた。
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