淡雪の如く

2/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「あんた、一体いつまでそうしているつもり?」 「お前が俺の頼みを聞いてくれるまでだ」 「別れろって?」 「頼む」 「そればっかりじゃないか」 「これ以上、お前と関係を続けるわけにはいかない」 「誘ったのはあんたじゃないか」 「あれは……気の迷いだ」 「気の迷いで、一年もあたしと付き合ってたって事かい?」 「お前は美しく、俺は初めて見た時から惚れていた。だが、俺は何の取り柄もないただの男。付き合えるなんて思ってもみなかった。だから、お前が俺を受け入れてくれた時は、本当に嬉しかった」 「それでいいじゃないか」 「だが、俺は既婚者だ」 「そんな事はとうに知ってるよ。酔ったあんたが、聞いてもいないのにベラベラ話したんだからね」 「俺は、これ以上妻を裏切れない」 「本当にそれが理由かい?」 男は、一瞬押し黙った。 「……子供が出来たんだ」 「……やっぱりね」 「妻には今まで苦労をかけた。だから、ここで全て精算して、子供の為に真っ当に生きると誓ったんだ。だから、そのためにはお前が……」 「あたしが邪魔だってことだね。勝手な男」 「すまないと思ってる」 「責任でも取ってくれるのかい?」 「取れるだけの事はする」 「真面な事言ってくれるじゃないか」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!