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しかしながら、朝にこうして飛ぶのは勘弁して欲しいと思う。
朝は一日の中で最も時間の無い時間、私が無くした『八分間』があれば顔を洗えたかも知れないし、歯が磨けたかもれない。何よりも、お布団の温もりにもう少しだけでも包まれていられたかもしれない。
私がこうして毎日のように平行世界を移動して、八分間を無駄にするなんていう体質が神様から与えられた贈り物なんて言うのなら、あまりにもご迷惑で、余計なおせっかいだ。
『どうしようもない』、この言葉に尽きる。私はこの神様がくれたご迷惑な贈り物によって起こる問題を私は甘んじて受けるしかない。
私は天国と言う名のお布団から抜け出し、大きなため息を吐く。私が出来る唯一の反抗なんてこうしてため息を吐く事ぐらいしかない。
「気だるい………。」
昨晩は夜更かしもせずに寝たはずなのだが、睡眠不足の気だるさを感じる。
まるで真夜中まで放置していた数学の課題に追われていた日の翌朝のような、つまりいつもの睡眠時間の半分程度しか睡眠時間がとれていないような感覚だ。
飛んだのは一度だけでは無いのかもしれない。
私はこういう時にいつも通りの景色を確認するようにしている。なぜなら平行世界を移動した証拠は、いつも通りの景色の中にあるちょっとした違和感なのだから。
『八分間』だけの違いがある世界、それが平行世界らしい。平行世界には八分間だけの差異がある。そしてその八分間の差異の分だけ何かが違う。
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