『プレゼント』

1/1
前へ
/4ページ
次へ

『プレゼント』

そんな雪の夜、僕は彼女の為、春に芽吹く取っておきのプレゼントを 雪の中に隠す為やって来た、なぜわざわざ夜にと思われるだろうが 雪の夜、暖炉を囲んで家族で談笑する趣旨は持ち合わせてないのでね とはいえスノーシューも履かずツボ足で歩くのはツラい 雪明りで多少は明るいが降雪もありこのLEDライトでは心許ない 案の定、足を踏み外し5メートル程滑落し立木で脇腹をしこたまぶつけてしまった。 沢の音がする、ここでは積雪はあまり期待出来ないな そう思い、確実に傷めた肋骨が気にはなるがなんとか這い上がり 歩みを進めた、気付けばライトはさっきの沢に忘れてきたようだ なぁに気にする事はない、全ては彼女の為 彼女の三日月目で喜ぶ顔が目に浮かぶ 天気予報では3日間は雪が降り続くそうだ きっと春までプレゼントをそっと守ってくれる事だろう 雪がとけ季節が春の日射しにつつまれる頃 世界は彼女の為に輝き始める、その傍らに立ち 彼女の三日月目を覗き込めればこれ程幸せな事はない だがその役目は僕ではない、僕はただこのプレゼントを 彼女の為に・・・ ・・・こんな愛の形も、まずまずだ 低木林がまだらに生える開けた場所へ出た、この地形なら上方には雪庇が きっと出来てるだろう、デブリに包まれ更に積雪が積み重なれば完璧だ ここにしよう! ここから彼女の世界が始まる!
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加