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『プレゼント』
そんな雪の夜、僕は彼女の為、春に芽吹く取っておきのプレゼントを
雪の中に隠す為やって来た、なぜわざわざ夜にと思われるだろうが
雪の夜、暖炉を囲んで家族で談笑する趣旨は持ち合わせてないのでね
とはいえスノーシューも履かずツボ足で歩くのはツラい
雪明りで多少は明るいが降雪もありこのLEDライトでは心許ない
案の定、足を踏み外し5メートル程滑落し立木で脇腹をしこたまぶつけてしまった。
沢の音がする、ここでは積雪はあまり期待出来ないな
そう思い、確実に傷めた肋骨が気にはなるがなんとか這い上がり
歩みを進めた、気付けばライトはさっきの沢に忘れてきたようだ
なぁに気にする事はない、全ては彼女の為
彼女の三日月目で喜ぶ顔が目に浮かぶ
天気予報では3日間は雪が降り続くそうだ
きっと春までプレゼントをそっと守ってくれる事だろう
雪がとけ季節が春の日射しにつつまれる頃
世界は彼女の為に輝き始める、その傍らに立ち
彼女の三日月目を覗き込めればこれ程幸せな事はない
だがその役目は僕ではない、僕はただこのプレゼントを
彼女の為に・・・
・・・こんな愛の形も、まずまずだ
低木林がまだらに生える開けた場所へ出た、この地形なら上方には雪庇が
きっと出来てるだろう、デブリに包まれ更に積雪が積み重なれば完璧だ
ここにしよう!
ここから彼女の世界が始まる!
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