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「はい、え?ちーちゃん?待ってすぐ開けるから」
カイザーのマンション。おっきいな。
タクシーを降りて見上げた建物の上には冬の星座が光っている。
明日は雨なのか、白っぽい雲が西の方から広がってきているようだ。
フードに覆われた髪が頬にかかる。さっきほどいた髪、止める時間がなかったから。
初めてここに来た。
聞いていた部屋ナンバーを押してみる。カイザーが前に教えてくれた番号。あの時聞かないふりしてしっかり覚えた。
入り口の施錠が解除される。中に入るとホテルのロビーと見まごうほどの造りだ。
エレベーターが降りてくる。
心臓がとんでもなく早い。バッグを持つ手に嫌な汗がにじんでる。
やばい、狭心症の発作かしら。
あ、エレベーターがついた。
「ひゃん!」
ドアが開いた途端に目の前が真っ暗になる。
「ちーちゃん、ちーちゃん!」
「ぐ、ぐるじ」
「あ、ごめん。」
腕を緩めてくれてありがとうございます。窒息するかと思ったわよ!
「どうしたの?というか、早く部屋行こう。耳こんなに冷たい」
そのまま抱きかかえられるようにエレベーターに乗せられ。
バッグを奪われ。
言葉を交わすでもなく部屋に招き入れられ。
その間の彼は厳しい顔をしていて。
なんだかいつもの1.258倍かっこよくて、眩しく思ったのだけれど。
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