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「あー焦った。エレベーターの中で襲っちゃうんじゃないかとすっげ格闘してたんだよね、僕の中のブラックカイザーくんと。も~大変だったんだよ~。
わあ、すっかり冷えちゃって。ほら リビングに入って、コートは預かるね。」
「や、あの」
やだ、コートむしられた。
「え?ちーちゃん……。」
「あの。ハッピーバースデー。先生。」
恥ずかしい。
でもこのくらいしか思いつかなかった。
首に赤のリボン。
本当はチョーカーとかの方が決まるんだろうけど。
いやそれ以前に。
私、部屋着のまま。
電話中、目に入ったパンダのぬいぐるみについていた赤いリボン。咄嗟に思い付いて、ほどいて自分の首に結んだ。
アパートを出る前、着替えを詰め込む冷静さはあったのよね。
なのに自分自身が着替えてないっていうのが、やっぱり焦ってた証拠。
タクシーの中、あまりに寒いからなんでかなと足元を見て、初めて気づいたという間抜けぶりには自分でも笑えた。
「も、ちーちゃん。君ってどこまで……。」
そう言って腕を回してくる先生に今度は自分から飛び込んでいく。
「ごめんなさい。知らなかったの。婚約者として失格。」
「そんなこといい。そんなこと。……愛してる、ちーちゃん。」
ぐうううううう……
お腹の虫が代わりにお返事、って恥ずかし!
「ぶっ。お腹空いた?丁度ピザ頼もうと思ってたんだ。ほら、早く中に。」
先生が手を引いてリビングに連れて行ってくれる。
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