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「もしかしてデート?」 「デートまでは要らないんじゃない?」 だって渡すだけ。ロッカールームに入れた紙袋を、はい、って。 なによ、らんちゃん。そのにんまり笑いは。 「そりゃダメでしょ。やっぱり今日はお泊りしないと……」 なんで? 「うっわ、これは。大変だ。」 いつになく真剣な声がたまちゃんから出た。 思わずみんながたまちゃんを見る。 せわしなく指を動かしていたたまちゃんが、ひと息ついた。 「ほら、北陸で大雪ってニュースで言ってたでしょ?」 「ああ、うん。ニュースでもばんばん。」 「前にね、研修いったじゃん私。その時仲良くなった子たちとグループラインやってるんだけど」 去年12月にあった看護師のブラッシュアップ研修か。 「その中に福井の子がいるんだよね。なんでもこないだの大雪の時に、車が大渋滞であちこち道路が止まっちゃって、地元の訪問系の人たちが身動き取れなくなっちゃたんだって。」 「訪問系というと、訪問看護に訪問診療、訪問入浴、ヘルパー、配食サービス」 「デイサービスも。」 「なんで?」 らんちゃんが突っ込む。 「もしかして、送迎が出来なくて?」 さっちゃんがソファの上で姿勢を正す。 私もおにぎり持った手を膝の上に。     
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