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駅の改札を出て階段をおりて広場まで出たとき、目に入った景色を見て自然と声が出てしまった。
「うーん。なんにも変わってない。正面に見える日本一の山も。右と左に見える山も。工事中のビルも・・あのビルはまだ完成してんだ・・っと」
私はこの町をわかりやすく心の中で感想を言ったつもりだったんだけど、声が出ていたのか通行人が怪訝な表情を浮かべてすれ違っていった。
慌てて私は駅の広場を早足で自分の目的地へと向かった。
どうやら私の見た目は大きく変わってしまったけど、思ったことをすぐに口に出す所は変える事が出来なかったようだ。
商店街の途中にある駄菓子屋でよくお菓子を買ったんだ。よく小さいチョコレートを買っていた記憶がある。
だが、残念なことに、駄菓子屋はシャッターが降りており、懐かしの味にありつく事は出来ないようだった。
商店街の出口に差し掛かった所で、小さな遊具しかない公園が目に入った。
「ここでは昔よく遊んだっけ。まだあるんだ・・・懐かしいなぁ。」
また口に出ていた。その場を立ち去りたくて自然と足が速くなる。目的地はこの先だった。
商店街の反対側へ渡る横断歩道の信号が変わるのをを待っている間に私は乱れた息と腰まで伸びた髪を整えた。
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