第9章 疑似恋愛

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・ 「──…っ…ちょ!?…何してんのこんなとこで!?」 「だって聖夜、電話に出てくれないから」 「なんの電話?…出てもあまり実になる会話しないよね?」 毎回、舞花から掛かってくる電話── 一度出てみれば CMの撮影が辛どいとか、あのADが気に入らないとか── ほんとどうでもいい内容だらけだ。コイツの頭は空っぽか!? そう問い掛けたくなる話題ばかりだった。 しまった… 気付かないフリしてスルーすればよかったっ── せっかくの役者の腕が思わぬ不意打ちで発揮できない。 それなりに遠回しに交わしてたら舞花はとうとう俺のマンションまで来やがった── まだ熱愛騒動のスキャンダルでっち上げて一ヶ月と間もない。 おまけに次いでのドラマ共演でほとぼり冷めるかと思ったマスコミ側は、常にスクープを狙ってるって言うのに頭悪いにもほどがある。 ただ、完全なコイツは素人だ。 俺が今まで御忍びで付き合っていた女優や業界人とは違う。 一番手を出してはいけないジャンルに手を出してしまった… 人助けの筈が、 あの髭チンピラのせいだっ 見渡しのいいマンションの玄関口── どこから写真を撮られてもおかしくない場所で俺は挙動不審も露に周りを警戒した。 ・ 辺りを見ながら俺は強く舌打ちした。 「ちょっと来て」 舞花の腕を引き、出てきたばかりのドアを抜けてエレベーターに乗る。自分の部屋の階を押すと楠木さんに電話を掛けた。 「俺、今から用あるし話す時間ないから。楠木さん呼ぶよ」 止まったエレベーターから降りてマンションの鍵を開けると中に舞花を促した。 一番入れたくなかった俺のテリトリー。 今まで関係を持った女一人たりともこの部屋に足を踏み入れてはいない。 今のドラマの仕事が一段落したら晶さんと一緒に── そう思っていたのに真っ先に舞花を入れることになるなんて、まるで全てにケチが付いたみたいだ。 電話を耳に宛ながら舞花にソファをすすめて冷蔵庫から飲み物をとる。 遅いっ… 楠木さんは中々電話を取らない。 俺は着信を残して電話を切った。 「お茶でいいよね」 てか、お茶しか出さないけど。 ペットボトルの飲み物をグラスに注ぎながら舞花の様子を後ろから見た。 舞花は思いきり部屋を見渡している。 なんだか侵されてる気分だ──
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