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ただ、やっぱり画面の中の人はあたしの恋人ではなくて、あたしの恋人は、柏木 夏希ちゃん。この人だ──
玄関のドアがカチャリと開いて入ってきた夏希ちゃんをあたしは振り返った。
「なに、俺のCM?──新しいやつじゃん?オンエアされたんだ」
夏希ちゃんは声を掛けながら隣にきてしゃがみ込む。
床敷きのマットに胡座をかいていたあたしの顔を覗き込むと
「待たせてごめんね」
そう囁いてキスをした。
「大丈夫?疲れてない?」
「ん…疲れてないよ」
「爆発ってなに?」
口付けを繰り返しながら言葉を交す。
「爆発ってこれ……」
夏希ちゃんはあたしの手をとって自分の下半身に添えた。
「爆発したの?」
「うん」
「じゃあ今日はもう大人しいね」
「もう一発あるじゃん」
「そか」
「うん」
夏希ちゃんはあたしを押し倒してゆっくりと被さってくる。
「なんで爆発しちゃった?」
「………」
「どした?」
「晶さんの電話の声にヤラレタ…」
「声?」
「うん…声ってか、色々…」
「……あっ…」
潤んだ瞳で見つめながら首筋に吸い付いて軽く音を立てる。
・
ぞくぞくと肌が痺れあたしの下半身にも潤みが増した。
手を添わされた夏希ちゃんの猛りが雄々しく張り上がってきている。
衣服を通して伝わってくるそれにあたしも躰の奥が疼いていた。
「もうシャワーしたの?」
「うん」
「シャンプー替えた?」
「うん…」
夏希ちゃんと付き合い始めてから意識してちょっとだけ高いやつに替えた。
「すごくいい香りする…」
あたしのシャンプーの香りを嗅ぎながら耳元で囁く声に鼓膜が揺すぶられる。
夏希ちゃんの興奮した吐息。
掠れた声に全神経が反応していた──
脳髄がうっとりととろけてくる。
「夏希ちゃんは……」
「ん?…」
「夏希ちゃんは…香水の臭いがする」
「──……」
夏希ちゃんは目を見開いた。
「あ、あのっ…っ」
「……」
「これはっ…ちょ…」
「どした?」
「……──っ…」
なんだかあり得ないくらいに動揺している…
ただいつもと違う。ちょっとそう思っただけだったのに…
「何かあった?」
「い、や…っ…なんにもっ」
普通に尋ねてるだけなのに…
「なんでそんなに慌ててるの?」
「ち、ちがっ…別に慌ててなんかっ…っ」
「………」
「……っ…」
訊ねても慌て
無言で見つめても慌て
あたふたと挙動不審な身振りを見せる。
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