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「ほい、ランチBセットな!」
出来上がった料理をマスターがカウンターに置いていく。
あたしはそれを受けとると熱いうちにと注文客へ運んで回っていた。
「なんか込んで来たわね~ここも…」
「ミニスカ効果効いてるって感じか?はは!」
「そうね?言ってる本人に一番効いてそうね?」
「…ぶっ!──」
相変わらずの掛け合い。カウンター常連の春姉の一撃に高田さんは口にしたガーリックチキンを吹き出していた。
「やー!?ちょっとニンニク飛ばさないでよっ!?」
高田さんの口から散らばったガーリックチキンの刻みニンニクがそこら中に飛んでいる。
春姉はバッチイ物でも払うようにしてナプキンで拭いていた。
「春姉、コーヒーお代わりいる?」
「貰うぅ~…あたくしに断る理由なんかなくてよっ」
「なんで貴族風?」
カウンターに来たついでにランチ後のコーヒーを進めるあたしに、春姉は髪を掻き上げ歌劇団のように椅子から立ち上がりコーヒーカップを差し出した。
カウンターに置いた方が注ぎやすいんだけど、煽ると何を言い出すかわからない。
・
取り合えずあたしは火傷させないように慎重にコーヒーを春姉の手持ちのカップに注いであげた。
「下がってよろしくてよっ」
「はは、春子さんそれ何様?」
普段のキープ席が混雑で埋まっていた為に高田さんは春姉の隣に座って遅めの昼食を取っていた。
大人しく椅子に座った春姉の隣にいた高田さんのカップにもあたしはコーヒーを注ぐ。
「地元はどうだった?」
高田さんはオシボリで自分が散らしたテーブルを拭きながら言った。
「いつもと一緒、居酒屋でガッツリ飲まされちゃった…酒豪を潰せっ~!て」
「晶ちゃん強いもんね~」
春姉と会話しながらカウンターに入る。
昼を少し過ぎれば喫茶店の混雑は直ぐに治まる。
「酒豪潰すには飲み放題が打ってつけだな」
厨房の片付けを粗方すませると奥からマスターが出てきた。
「春の花見は晶にやられたからな~」
「いい酒は水の様に体に入っていく…」
あたしの一言にマスターは怨めしげな視線を向けていた。
店での花見で限定の大吟醸だと見せびらかしたマスターの酒を、あたしは根こそぎかっ浚ったのはまだ記憶に新しい──
「高田ちゃんは真っ先に潰れちゃったもんね~…」
「よく言うっ!?人が知らない間にバクダン仕込んだのはどこの家老だっけ!?」
高田さんは春姉に反論している。
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