第9章 疑似恋愛

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・ 夕方に差し掛かりそろそろ混む時間帯になってきた。 「晶、少しバイトの日数増やせるか?」 「日数?」 「ああ」 「できるけど…人足りてるでしょ?ママも居るし新しいバイトも来週から来るし…」 そう、以前募集を掛けたその翌日にバイトの応募があった。 「ああ、店も順調だからな、うちのがガーデニングの資格かなんか欲しいってんだよ──。今まで好きなことさせてなかったからここらでと思ってな…時給50円アップするぞ?どうだ?」 「乗った!」 うーん…あたしは銭の誘惑に弱いな。。。 間髪入れずにあたしはマスターにオーケーを出した。 喫茶店のバイトの帰り道── あたしはスーパーに立ち寄った。 ・ ドラマの撮影が始まってから夏希ちゃんは多忙をきわめている。 まだドラマの放送はされていない分、番宣の番組出演がかなり多いらしい── この間家にきた夏希ちゃんは、こぶたの大きな置物を抱えて現れた。 「……なにそれ?」 「漢気じゃん拳で勝っちゃって……」 なんでも、じゃん拳で勝ってしまうと、欲しかろうが欲しく無かろうが指定された品物を気前良く買わなけれ罰があるのだとかいうゲームの番組に番宣で出たらしい… 中国人経営の古物店で仕入れたらしいその置物。 「いくらだったの?」 「25万円…座布団が三千円だったけど御釣り貰えなくて25万と五千円払った…」 「なんじゃそりゃ?」 黒いこぶたの置物には真っ赤な絹の座布団が敷いてある。 「俺だと思って可愛がって…」 夏希ちゃんの言葉通り、あたしはそのこぶたに夏希ちゃんのパンツを履かせて名前入りのプレートを首から提げてあげている。 ホンモノの夏希ちゃんより案外可愛がってるかも知れない。 けっこう哀愁漂う表情をしていて、日を追う事に愛着が沸いている。 再来週放送されるって言ってたから視てみよう── これからは、夏希ちゃんが出るっていうのはなるべく目を通してみようかと思う。
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