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 暑い。くそ暑い。  こんなお天道様がはしゃぎすぎて人様に迷惑かけてる日は、さっさと帰ってクーラーガンガンの部屋で涼むのが一番なんだけどな。 「なんで私がこんなことしなきゃいけないのかなぁ」 「ん? なんだ蝶子、不満か?」  暑さにイライラして口走った私の顔を鈴原先生が覗き込むようにして訊ねる。  顔近いって。  ぼさぼさ頭に無精ひげ、アイロンもかけてないカッターシャツによれよれの白衣を羽織ったおよそ教師には見えないこの男は、鈴原純太。高校の化学教師であり、私のクラス担任。年齢は――知らない。教えてくれないし。まぁ、見た目はそんなに老けては見えないけどけっこういい年であるのは確かみたい。この高校でも古株っぽいし。  それで終業式が終わって帰ろうとしていた私は先生に呼び止められ化学室の掃除を手伝わされるはめになり、今に至る。 「だって、これって学級委員長の仕事じゃない気がするし。いや、まあその、それほど嫌ってほどでもないけど――」 「よし。そうかそうか。じゃあ、あのダンボールを準備室に運んでくれ」  先生は満面の笑みを浮かべ、親指で後ろにある大きなダンボールを指差す。 「こんなの女の子に運ばせるかな、普通」     
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