陽光の檻

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俺はおじさんに伝えて居なかった感謝の言葉を 思い付いた端から全て述べた。 自分の息子の様に遊んでくれた事や 亡き両親の話をしてくれた事。 義妹と喧嘩して味方になってくれた事。 俺の所為でおばさんとの仲が悪くなったのだから 俺が責任を感じるべきであって おじさんに非は絶対にない。 上手く伝わったかは分からないが 俺の言葉が終わるとおじさんは 涙を浮かべた目元を隠して「ありがとう」と ただそれだけ俺に言った。 それまで口を噤んで居た陽田が 俺の肩を叩いて俺に座る様促す。 「御自分を責めないで下さい。 貴方の行為は立派でこそあれ 誰かに責められるべきではありません」 陽田の言葉を聞くと この場から逃げる様に席を立った。 掠れた声で「ちょっと御手洗い」と言ったが その言葉の裏は透けて見えていた。 「君も、責任を感じる必要はありませんよ」 「は?」 おじさんが居間から出て行くと 陽田は俺に顔を向けていた。 「夫婦仲の悪化が 必ずしも君一人の所為ではないという事です。 他にも理由がないとも限りませんからね」 「・・・どうだかな。 俺が居なけりゃ、 義妹と喧嘩なんて事も無かったし」 喧嘩の理由も、今となっては 思い出す事も無い程些細な物だ。 そんな事で夫婦仲を悪化させた俺は やはり、おばさんが思う様に 疫病神なのかもしれない。 「これは自論なのですが・・・ 『喧嘩しない家族は存在しない』 喧嘩がないという事は 生活がスムーズだからというよりも 互いへの関心が薄い事の方が多いですからね」 俺にとって意外な事を淡々と 陽田は自分なりの解として言葉にする。 けれど、妙に説得力がある言葉に 首を傾げながら若干納得していた。 「・・・そういうもんなのか」 「そういうものですよ、 私も幼い頃は些細な事で 両親とよく喧嘩したものです」 その言葉通りの光景が全く想像出来ない。 陽田はそれ以上何も言おうとしない。 なので、その話を詳しく聞こうとした所へ おじさんが居間に戻ってきた。 「・・・狼君や陽田さんにそう言って貰えて やっと、報われた様な気がします。 ありがとう・・・本当に、ありがとうございます」 .
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