荊の雪路

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多分、彼女は正しい人だ。 でも、俺は彼女の息子じゃない。 どうして、実の母でもない人に こんなに痛い思いをさせられるんだと 何もされない義妹が羨ましくなって 理不尽に思えて、鎖で首を絞められる様に感じて 雪の夜、俺はこの家を出たのだ。 陽田の手を振り払いもせずにじっと そこまで思い出して、自問した。 どうして、俺はここまで戻って来た?と。 陽田に連れて来られたからだと自答して、 大人しく来る事は無かった、断れば良かった。 それをしなかったのは何故?と、また自問。 本当は大して思い詰めてないのではと、自疑した。 吐き気に近い嫌悪感が沸いたら 陽田の手を振り払えない癖に この場から逃げたくて仕方ない。 やがて、俺の思考は凍結した。
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