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「父さん、玄関の戸が壊れてよ」
暖炉の上に、冷え切った兄を温めるための湯を用意していたセウランである。
何事かと二階から降りて来たピタを振り返りもせず、冷たい調子で言った。
「どうしてお前が戸を開かない」とピタは言った。可愛くない娘である。
しゅーと沸騰した湯気をあげる薬缶を取り上げながら、セウランは淡々と答えた。
「怖くて無理よ、女ですもの、父さん」
どんどどん、ばんばん、げし、げしげし。
早く開けて、この子冷たくなってる、ついでにあたしも寒くて凍えてる、ねえ、おい、そこに人がいるの分かってんだよ、うわあ白目剥いてる、お願いお願い早く開けてくださいっ。
丑の刻。真夜中。
ピタは溜息をついた。
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