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レイア21歳。
セウラン18歳。
雪が溶けだし春が近くなったころ。
まだ夜は寒い。
蝋燭の灯を頼りに、薬房で薬草の仕分けをしていたのはレイアである。
冷たい風が吹き込むので、夜は格子窓に雨戸がつく。
蝋燭がなければ、暗闇だ。
そろそろ休もうかとレイアは思っている。
少し風邪気味である。
医者の不養生ではなく、もともとレイアは体質が弱い。
ひょろひょろの骨川筋衛門である。生白い顔をしており、猫背でがに股ぎみなので、いかにも貧弱なのだった。
父ピタが痩せぎすながら、しなやかなばねのように鍛えられた体をしているのに対し、レイアは全然駄目だ。
まるで運動神経が良くない。考え事をしながら歩くので、よく転ぶ。体に青あざが絶えない。
あいつはアホではないかと近所の同年齢たちには思われていたが、その実、頭脳はずばぬけて優秀である。
ピタが所有する膨大な魔薬士の育成書は、すべて読破してアタマの中に入っている。
一度読んだ学書は細かいところまで脳のひだに焼き付けられており、ずっと忘れることがない。驚異的な記憶力がある上に、恐ろしく計算が早いのだった。
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