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第5話 今夜は初夜
結婚には、勢いが大切だって、本当らしい。
目の前には、折橋さんの名前と印鑑が押された婚姻届けが、広がっている。
「さあ、つむぎ。早く。」
昨日まで、つむぎさんと呼んでいた折橋さんは、人が変わったように、私を呼び捨てにしている。
一日で、こんなにも世界は変わるんだろうか。
「ああ。今日が休みで、本当によかったね。」
折橋さんは両手を広げながら、外の天気を伺っている。
あの~、お兄さん。
急に人の家に来て、それはないんじゃない?
「婚姻届けを出したら、直ぐに僕の部屋へ引っ越そう。楽しみだね、つむぎ。」
ワクワクしているのは、折橋さんだけですと言ったら、悲しい顔をされるかな。
昨日の夜、思い余って告白したのが運の尽き。
そのまま、奥さんになるねと言われ、頷いてしまったが為に、今に至る。
でも、折橋さんを好きな事に、嘘はない。
私は婚姻届けに、自分の名前と印鑑を押した。
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