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女性がやってきました
しばらくごたごたし、占い師はしばらく仕事を休むはめになりました。
そして約半年後、ようやく占いの仕事を再開したとき、ある女性がやってきました。
社会人になったかならないかくらいのとても美しい女性でした。彼女はとても苦悩しているようで、表情を真っ暗にしたまま占い師に尋ねました。
「私は彼と交際したいのです。でも皆が反対するんです。親も、友達も、フッたはずの元彼まで私にやめろって言ってくるんです。でも私は彼と付き合いたいんです。どうしたらいいですか?」
私は水晶を横に置いて、彼女に問いかけました。
「付き合えば良いじゃないですか。周囲が何と言おうと関係ありません。どうしてそんな事を占い師に聞くんですか?」
彼女はすぐに答えました。
「彼がそうしろ、と。あの占い師の占いは絶対に当たるからって。元彼はあなたのこと信じてなかったみたいだけど、私の彼はあなたの言葉を信じて、そして私と出会うことができたって何度も褒めていたから」
そこで彼女は少しだけ言葉を詰まらせましたが、思い切ったように言葉を続けました。
「私は会った事もないあなたを最初恨んでました。あなたが望むままに行動しろなんて言うから、あの人は私をストーカーしたり、拉致したりしたんだって……。あなたの言葉のせいで私が苦しめられてるんだって、そう思ってました。でも違ったんです。彼は、凄く優しいんです。ちょっと前に起きた地震のとき、崩れてくる天井から身を呈して私を守ってくれたんです。確かに、彼が私を誘拐したからあんな酷い目に遭うことになったって皆言うけど、でも違うんです。彼は、頭から血を流しながらも、私に『大丈夫か?』って気遣ってくれたんです……」
感情が高ぶったのか、彼女はわんわん泣きながら、その思い人のことを良く言いました。
彼は少し思い込みが激しいだけで、凄く良い人なんだ、と。いざというとき私を全力で守ってくれるのは彼だけだ、と。
彼以上に私を愛してくれる人なんていない、と、何度も言い募りました。
一通り話を聞き終わると、占い師は水晶を弄んでいた手を彼女の頬に当てて、こう言いました。
「あなたは、あなたが望む通りに行動しなさい。ただし二人の手を取ることはできません。あなたが本当に望む方の手だけを取りなさい」
占い師の答えを聞くと、何かを決心したような透明な表情を浮かべて帰って行きました。
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