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しかし、俺は、幻魔という存在の真の恐ろしさを知らない俺は、その罠にはかからない。
「そういうのを、蛮勇というのだ」
「出たな、幻魔、いや、高鳥慶介!」
気がつけば、それは氷の柱が林立する鍾乳洞のようであり一大宮殿であった。
「ほう、私を知っているのか、ただのトップ屋が?」”やつ”は言った。背の高い中年の優男だ。いわゆる美形親父なのだろうが、ただそれだけの薄っぺらな印象。影のような男。
「冗談はヨシコさんだな。おたく、大量の輸血を受けただろう?ほら、交通事故でおたくが大怪我したときに。その後、怪しげな能力に目覚めたおたくは、RMAって新興宗教を立ち上げた。あれ、俺の血だったんだよ」
「な・・に」
「おたくは、事故での臨死体験を経て超能力に開眼したって勘違いしたようだがな。そのくせ、その血を他人に与えれば、どんな病気も治すとか能力に目覚めるとか、それで、信者の女にはこれで利益があると、何人もコマしたんだろうが、このエロ教祖め」
「うるさい!黙れ、私こそが仏陀もイエスをも越える、真の救世主なのだ!」
「そう思うなら、もっと気の利いた説法でもすればいいのによ。欲にまみれて、挙句に幻魔とかに魂を売ったのだろう、おたく」
「世界をワタシが支配し、人々を救済するには、それが必要だと思ったからだ。私が幻魔の力を得るためには、な」
「ふん、みんなそう言うのだ。ミイラ取りがミイラになるだけの話なのにな」
「うるさい、わが実力を知れ!大隕石”スカルムーン”をも操る幻魔の力を!」
ごあああ!
俺は、風に吹かれてエドメガロポリスの中を飛んだ。確かに、俺は軽量級だからな。しかし、俺の体は摩天楼に叩きつけられることなく、雪山の中に無事着地した。
ぺっ俺は、雪を吐き出した。火山灰、巻き上げた土砂を含んだ汚れた雪だ。
ああ、そういうことなのか。そうやって、太陽の光をさえぎる塵が地上に早々に落ちる自然の巧みな仕組み。この急場の氷河期は思った以上に早く収まるだろう。俺は確信した。
自然はなんと偉大なのだ!俺は、おもわず大自然に感謝した。神とかは知らないが、大自然はなんと偉大なのだ!世界は、幻魔などには負けはしないのだ。俺は確信した。
「今度は、こっちの番だぜ」俺は、狼の笑みを浮かべて立ち上がった
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