雪嵐の魔王

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 ”西暦1999年、第七の月、天空より恐怖の大王が降りてくる”仏の中世の詩人ノストラダムスの残した意味不明の多数の四行詩群。巷間では、それは未来予知をした所謂の予言であると一部の好事家が注目してはいたが、当然ながら、世間はそんなもの最初から無視していた。それよりも、日々の生活が大事なのは、洋の東西に関わらず、国の先進後進も関係なく、言うまでもないことだった。そんなものを取り上げるのは、一部の好事家と、それを面白おかしいネタとして扱うマスコミくらいのものだった。  だからノストラダムスの予言のことを知っている者は、案外に多かったのだが、だからといって、それに対しまともに警戒、対応しようとするものは絶無だった。米ソ二大核保有国は常に過剰破壊の核戦争の危機緊張感の中にあり、その予言詩がこの日本帝国・・もっとも、近頃は国際的世間体をはばかって、単に”日本”と呼び習わすのが通例になっていたが・・の中で人々に知られるようになったのは、まだ70年代だったが、”それまで生きていられるのならば、御の字じゃないか”と嘯く人間が少なくなかったのである。
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