雪嵐の魔王

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 米ソの核ミサイルは、大陸間弾道弾と呼ばれ、それぞれの領土の核のサイロから相手国に発射されると考えられてきた。そのために、一秒でも早くその発射を確認するための人工のスパイ衛星やレーダー技術は日進月歩であったのだ。であったはずなのに、人類は、ついに”それ”・・あるいは”それら”・・を発見することができなかったのである。  後から考えれば、理論上は発見できるだけの技術があったのだが、その視線はすべて高くてもせいぜいが大気圏上層、つまり、彼らは全員も地表しか見ていなかったからである。  運がよければ、宇宙を覗く天文学者という連中が、それを見つけることができたかもしれないが・・米ソもどの国もその高まる東西緊張ゆえに、学術研究予算はこの数年は、絞りに絞られよくてもう10年以上も昔、大部分は老朽化した天体望遠鏡で細々と続けるしかできなかったのだから、無理な話。そして、実際、彼らはついに、それを発見することができなかったのである。言い訳がましいと思うが、天文学者は”まるで、天文学者の観測の盲点を突くように、それは、その非観測領域を縫うようにしてやってきた”と言い訳したものである。  その失敗の報いは、しかし、すぐに彼ら天文学者にも降りかかった。あれから半年、おそらく生き残っている天文学者なんて脆弱な人種は、ほとんど居ないのではないだろうか。 ごあ、ごごご、びゅあああ・・・ 寒風というのもおろかな、寒風がすさまじい勢いで吹きすぎていく。俺のようなタフな人間じゃなければ、生きていくことはできないだろう。できれば、ラッキーセブンを吸いたいところだが、タバコの自販機をぶっ壊せば別なのだろうが、俺にはできない。いや、殊勝な気分はどこにもない。このご時世、この地表に警察なんて存在しないからだ。生き残っている人間が居るとすれば、他の国は知らないが、日本でも、さっさと世界を見限って、核シェルターの中に逃げ込めたやつらだけだろう。 だが、それも時間の長短の問題だと俺は思うわけで。核シェルターの中で、そこに10年以上生き延びる実力があれば、あるいは別かもしれないが、ここ数年は、この雪嵐、ブリザードは収まらないのではないか。核の冬だ。まったく・・人類は、バカだった。大バカだったのだ。
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