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「俺が不機嫌の挙句に怒り狂う前に、出てきやがれ」俺は、窓の外・・といっても、割れたガラスの穴から極寒の冷気が吹き込んでくるのだが・・の雪嵐を見ながら、愚痴った。
しかし、こんな寒冷地獄の関東地方にまだ”やつ”が居るのは間違いない。俺は、”やつ”が諸悪の根源だと、わかっている。信じている、でさえない。わかっているのだ。居るのはわかっているが、しかし、どこにいるかまではわからない。俺は、ひたすらこの何十mもの雪に埋もれたエドメガロポリスの摩天楼の間を歩き回り、”やつ”に出くわすのを待つしかないのだ。さても、俺が冷凍マグロになるのが早いか、”やつ”のところに到達できるのか。こればかりは、神のみぞ知るというところだ。
雪嵐の緩むのを待って手製のカンジキをはいて、俺は雪の上に歩き出した。いつもなら、愛車のブルSSSを駆って半日もあれば、俺はお目当てにありつくことができるはずだが、愛車もこの分厚い雪の上を走るのは不可能なわけで。泣く泣く、数十mの雪の層の下に残してやるしかなかった。
だが、それもまあ、あと少しの我慢だと思う。俺がお目当てにきっちり到達することのできる能力は、もはや神業の領域にあること、それは同業者の羨むところである。嫉妬の余り俺を殺したいと叫んだ人間も一人や二人ではないのだ。
あまりに鼻が利くので、奴らは俺のことを”悪漢ウルフ”と呼ぶ。その裏には女の子にもてる憎い奴という意味もあるのはいうまでもないだろう。
で、俺は、年齢不詳で通している。外見だけを言えば、だいたい30歳前後で通る。しかし、俺が開戦の年のことを覚えているといってやると、皆、椅子に座ったままずっこけるわけで。だが、これは、本当の話なのだ。
びおおおお!
風は緩んだといっても、またすぐに台風並みの風速に戻るだろう。そうなったら、近くのビルの中に逃げ込むしかない。あの時起こった大地震のせいで、ほとんどのエドメガロポリスのビルは大なり小なりの損傷を受けたので、もぐりこむのはそれほど困難ではない。俺が新しい建物の中に飛び込んだときには、それでもさながら歩く雪だるま状態になっていた。
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