雪嵐の魔王

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 毛皮のフードを払うと、仏の人気俳優、ジャン・ポール・ベルモンドに似ている・・かなり痩せてるそうだが・・という俺の麗しい顔が現れるのだが、今は髪の毛も髭も伸び放題ではわかるまい、どこの浮浪者かといわれても、文句はいえない。  しかし、それも”やつ”をしとめるまでの辛抱だ。  あえて言う。俺は、ただのトップ屋(死語)ではない。仕事の途中で何度も危ない目にあっているし、その修羅場の中で何人も悪党を殺している。それについては、弁解しない。そして今、俺は俺の全力を使って”やつ”を殺そうとしているのだ。  しかし、とにかく、エドメガロポリスは広い。世界ではギガロポリスという学者も居る。なにしろ、江戸湾を取り囲む一帯がそれなのだから。俺はこの雪嵐の合間を縫って歩き回って”やつ”を見つけるのは、困難極まりないこととわかるだろう。しかし、それでも、遮二無二やり遂げるしかないのだ。まったく、やっかいな話なのだ。  巨大隕石”スカル”の富士山降下から半年。そんなに時間をかけても”やつ”を見つけられないのは、”悪漢ウルフの名折れ”というなよ。それだけの難敵なのだ。さらにいえば、当初は今回の事件に”やつ”が関わっているなんて、思いもしていなかったのだ。それを、ある人から教えてもらったのは、まだ最近の話なのだから、その点は、勘弁してくれ。  あ、今しがたさらっと言ったが、巨大隕石”スカル”・・”スカル・ムーン”という奴もいる・・が月の影から突然天空に現れて、地球、しかもあろうことか富士山を直撃したのだ。そのために、富士山は巨大なカルデラ・・わかるか?阿蘇山みたいなものだ・・月の表面みたいなクレータになった。真っ赤な溶岩が血のように吹き上がったという。でもって、吹き上がった富士山の山を形作っていた土砂は小さな塵となって今、世界の空の上を漂って、昼なお暗い状況になってしまった。  そして当然、その衝撃は富士山大爆発だけで終わらず、関東地方に超巨大地震を起こしたしたのだ。
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