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「すみません…体調が優れないので保健室に行かせてください……」弱々しく手を上げ、由佳は言った。かろうじて先生にも声は届いていたようで、言って来いの一言だけ言うと授業を再開させた。
高校に入学して早3ヶ月過ぎたが、ほぼ毎日の様に保健室へ行く体の弱さだけは変わらなかったようだ。自分の入学したい高校に受かったのは良いもののこんな風に高校生活を過ごすなどまっぴら御免だなどと思いながら保健室の前に着く。
コンコンと軽いノックを響かせ、由佳はそっとドアを開けた。
「失礼します、1年2組の橋本由佳です、先生はいらっしゃいますか?…」
返事は返ってこない。どうやら保健室の先生は負材の様だった。取り敢えず、中に入って待つことにした由佳は入り口のドアを閉めた。
よく見てみるとベッドのカーテンの向こう側に人がいる。シルエット的には先生ではなく生徒だと察した。そのシルエットはくるりとこちらを向き、手招きしているようにも見えた。
ホラーの様な、その状況に由佳は体を大きく震わせた。怖い訳ではない。でも、足が竦んで動かない。
カーテン越しのシルエットは立ち上がってこちらに向かってくる。ごくりと息を呑んだ。
「あら、こんにちは。先生は今、来客があって居ないの。もし、体調が悪いのだったら体温計で熱測ってね。体温計のある場所分かるかしら?」
由佳はそのシルエットだったものに目を奪われた。
綺麗な青い瞳に銀色の長髪。ここは日本なのに一瞬で異国に飛んだかのように思える彼女の容姿。
でも、こんな人が居たら入学式などの行事で直ぐに分かってしまうのに、今の今まで私は彼女の存在を知らなかったのだろうか。由佳は心の中でそう思いながらも体温計で熱を測り始めた。
そう、これが彼女との始めての出会いだった。この先に沢山の困難が待ち構えているのにその時の由佳は気付くはずも無かった…
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