拾い物が大物だった件

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********** 水の流れる音がする… 音が止まってしばらくすると、ひんやりとした感触が俺の腹をくすぐる。 どうやら、濡れた布で腹を拭かれているようだ。 目を開けようとするが、瞼がくっついたように重くて開かない。 濡れた布の感触が離れてしばらくすると、また腹にひんやりと布が当てられた。 ゴシゴシと腹の表面を拭かれては離れ、を、何度が繰り返されている。 この家には俺しかいないはず…誰だ? それに…俺は助かったのか? あの男に与えられた傷は致命傷だった。 なぜ俺は生きている? 手を動かそうとするが、震えるだけで、全く力が入らない。 「あ、無理しないで下さい」 聞いたことのない声が、俺に向かって話し掛けたように聞こえた。 「死ぬ直前だったのを引っ張りましたから、かなり体に負担をかけたと思います。 まだ寝ていて下さい」 そう言った声の主は、俺の目に手を当てた。 人間の手にしてはひんやりとした感触がしたと思ったら、俺の意識は沈んでしまった。 … … … いい匂いがする。 俺は腹が減っていることを自覚した。 目を開けると、俺は自分の部屋の寝床で寝ていて、いい匂いは台所から漂ってきているようだ。 起き上がろうとしたら、体が思うように動かないのに気付いた。 きちんと掛けられていた布団をはぎ、何とか腹と背中と腕に力を入れて起き上がる。 俺の上半身は裸だった。 腹に傷はない。 まさか、あの男が来たのは夢ではないだろう。 どうなっているんだ? 優秀な魔導師ならば、傷を治す魔法が使えると聞いたことがある。 魔法の力で治したのだろうか? 俺はどのくらい寝ていたのか? 立とうとして、足に力が入らずふらつく。 情けない… こんな状態でまた襲われたら、本当におしまいだ。 台所から漂ってくる匂いといい、誰かが俺を救ってくれたことには間違いないのだろう。 この村では俺はまた新参者だし、馴染んできたとはいえ、心を許している友人はいないのだが。 村人の誰かが助けてくれたのならば、先に死体と血溜まりを掃除しておいて良かった。 ふらつきながら台所に向かって、そこに立っている人物を見たら、俺の心臓は跳ね上がった。
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