150人が本棚に入れています
本棚に追加
竜人!!
本来ならば大型の生物である竜が、人間と過ごすために、体を人間と同じくらいの大きさにし、人間と同じような形になったものだ。
大きさや形は人間と同じ感じになっているが、顔や体は竜の特徴を残したままだから、顔は鼻先が長く、鋭い歯が並んだ大きな口や、長い角が生えた頭や、鱗に覆われた体に、太く鋭い爪を持つ指先など、竜の見た目のそのままだった。
背中には折り畳まれた翼があり、太い尻尾が床に付いていて、三番目の足のように体を支えている。
それが、俺の家の台所に立ち、鍋で何かを煮ているようなのだ。
一体何が起きているんだ!?
俺は目の前の景色が理解できずに呆然とする。
まず、竜がその辺にいるような生物ではない。
昔はあちこちにたくさん生息していたらしいのだが、この世界では国と国とが領地や資源争いでよく戦争を起こしていて、その戦争で賢くて人によく慣れ戦闘力の高い生物である竜がよく使われていた。
そのせいで個体数が激減して、今、竜の棲み家は人間が迂闊に近寄れないような、限られた場所だけになっている。
だから、自然に生活している竜を見かけることはないと言っても過言ではなく、帝国はある程度の個体数を所持しているので、竜を見たら帝国の所属だと考えて良い。
ということは、この竜は帝国の竜か?
だとすると、何で俺の命を助けたんだ?
いや、そもそも、あんな傷をなかったことにする方法なんて、俺は知らない。
竜が魔法を使えるなんて、聞いたこともない。
本当に一部の限られた竜だけが、魔法のような能力を持っていると聞いたことがあるが、それなのか?
いや、それよりも先に考えることは、この竜が竜から竜人になっているということだ。
竜が竜人になるには、人間と契約しなければならない。
竜は人間と契約して、人間に力を渡す代わりに人の姿を手に入れる。
契約には竜と人間の相性も関係するが、段階があって、契約の段階を順番に進めていくにつれて、竜の姿は人に近くなっていく。
その分、人間は逆に竜の姿に近くなっていき、竜の強さを得ていくのだ。
最終的には、帝国の皇帝のように、竜であった者は人にしか見えず、人であった者は竜にしか見えなくなる。
皇帝は時間をかけて人の姿を捨てて、竜の姿と力を手に入れたのだ。
世界で一番恐れられている帝国の強さは、竜に支えられているのだと思う。
最初のコメントを投稿しよう!