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だから、この竜人には、契約者がいるはずだと思う。
契約者は帝国の関係者で間違いないだろう。
だが、目の前にいる竜人の他に人の気配は感じない。
それにしても、この竜人の色、全身が黄色というか、金色というか、とにかく明るくて、派手な色だ。
竜は大体が茶色や深緑など地味な色をしていて、一部の選ばれた力のある竜のみが鮮やかな色彩をしている。
帝国の所属でこんな派手な色の竜がいたら、流石の俺でも覚えていると思うのだが、この色の竜は見たことがなかった。
帝国内の軍属ではないところの竜なのか?
一体どこの竜なんだろう、と考えていたら、突然竜人が俺の方に振り向いた。
「あ、目が覚めましたか」
俺は驚きすぎて、少し飛び上がったのではないかと思う。
「すみません、驚かせてしまいましたね」
竜人はペコリと頭を下げる。
この声は、一度目が覚めた時に聞いた声だ…
「私は怪しい者ではありません。
この姿で驚かれたと思いますが…」
先の尖った鋭い歯の並んだ大きな口が動いて、そこから流暢な人語が出てくる。
「ああ、竜のことは良く知っている…」
俺が言うと、竜人は頷く。
「もう動けるとは流石ですが、無理はいけません。
とにかく座って下さい。
あなたの食べられそうなものを作ってみましたので、お口に合うかわかりませんが、いかがですか?」
竜人は近付いてきて、俺の手を取り、食卓の椅子へ誘導した。
鱗で覆われた手の、滑らかでひんやりとした感触が伝わる。
竜人は椅子の背を引き、俺をそっと座らせる。
竜人のくせにどういう紳士だ。
正面から見ると、竜人の腹は白かった。
座った俺の前に、器に入ったスープが置かれる。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
スプーンを俺に渡しながら、竜人は言った。
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