拾い物が大物だった件

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具がいっぱいのスープはよく煮込まれていて、とてもやさしい味で、俺の腹にゆっくりと染み渡っていく。 竜人は俺の前に座って、俺の食べる様子を見つめている。 「あの、いかがですか?」 心配そうな口調で、竜人が尋ねた。 ああ、味の心配をしていたのか。 竜の顔では表情がわからないから、気付かなかった。 「美味しいよ。 ありがとう。 お代わりもらえるか?」 「はいっ!」 竜人は嬉しそうに空になった器を受け取り、スープを入れて戻ってくる。 俺は二杯目も完食し、ようやく落ち着いた感じだ。 「お口に合って良かったです」 竜人は嬉しそうに言う。 何だこの竜は? いくら竜が人に懐くとはいっても、最初からこんなに人懐っこいのはみたことがない。 それに、この竜人の形態は、第一契約の初期段階だ。 この形態では、まだ人語は話せないはずなのに、この竜はある意味人間以上に流暢な人語を話している。 一体どうなっているんだ!? もう、考えていても仕方がない。 腹も膨れたし、思考も回るようになった。 「説明を求めたい」 俺が竜人に向かって声を掛けると、二人分のお茶を持ってきた竜人が、頷いた。 「俺の命を助けたのは、お前なのか?」 「はい」 竜人は俺の前に湯気の出ているお茶を置いてから、返事をした。 「そうか…ありがとう。 礼を言っていなかった。 だが、俺はほとんど死んでいたんじゃないのか? 腹の傷もなくなっているし、あんな状態からどうやって助けたんだ?」 「はい、あなたは正に死の直前でした。 私は、緊急事態とはいえ、あなたの合意もなく勝手なことをしてしまいました」 竜人が俯く。 「それは…」 「はい、あなたと契約してしまいました」 「けっ、契約!?」 思わず椅子から立ち上がると、激しいめまいがして、倒れそうになったところを、竜人が支えてくれた。 俺は大柄な竜人の腕の中にすっぽりと入り、竜人の金色の瞳に見つめられる。 橙色の縦長の瞳孔を、濃さの違う金色の虹彩が取り巻いている、美しい瞳だった。 「大丈夫ですか?」 「あ、うん、大丈夫だ」 何となく気恥ずかしくなって、俺は顔を背ける。 「まだ顔色が悪いですね。 布団に戻りましょう」 竜人はなんと俺を軽々とお姫様抱っこして、寝室へ向かう。
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