拾い物が大物だった件

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竜と人間の契約は、一蓮托生だ。 どちらかが命を失えば、もう片方も同じ道を辿る。 だから、お互いの信頼関係が深くなければ、滅多なことで契約はできないのだ。 「それでも良かったのです。 あなたを助ける手段があるのに、試さないなんて考えられませんでしたから」 「どうして… 俺はそんな助ける価値のある人間なんかでは…」 「いいえ、私には大事な人です」 竜人が笑ったような気がした。 「お前は俺に救われたと言ったな? 俺は竜を助けたことはない」 困った…俺は竜が嫌いではない。 むしろ…好きだ。 好きだから、俺を選んでくれなかった竜とその契約者を見ているのが辛くて、帝国を抜けてきた小心者なんだ。 そんな俺を大事だと言ってくれる竜がいるとは。 でも、本当に全く心当たりがなくて戸惑っている。 「私はあなたが飼っていた火トカゲです」 竜人は驚きの事実を発表した。 「はあ?火トカゲ!?」 「はい」 確かに、俺の火トカゲと色は似ているが… いやいや、火トカゲは火トカゲだろ? 「お前は竜じゃないのか?」 「いえ、竜です」 「え!?では何で火トカゲに!?」 「はい、それには深い訳が…」 竜人はポリポリと頭を掻く。 何だか人間臭い動きだな。 「私は竜の里の神官をしていました。 神殿で全ての竜の根源に関わる秘宝を守っていましたが、帝国の軍勢が攻めてきて、秘宝を奪っていきました。 私は皇帝に秘宝を使って力を奪われて、ただの火トカゲに変えられてしまったのです。 皇帝が私も知らない秘宝の使い方をどうやって知ったのかわかりませんが、秘宝は竜の歴史が始まって以来、守られてきたものだと聞いています。 私は抵抗の甲斐もなく、火トカゲに変えられ、引き上げていく皇帝率いる帝国軍に空中から放り出されて… そこであなたに拾っていただきました」 竜人は一度話を切って、一呼吸する。 「あなたは私をとても可愛がってくれて… 火トカゲになった私は一人で生きていくのも難しいし、あなたに飼われて生きて行こうと決めました」 「うっ…」 まさか、そんな拾い物をしていたとは、夢にも思わないぞ!
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