拾い物が大物だった件

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「ま、とにかく俺はお前が気に入っているんだよ。 ほら、もっと食え」 俺がシチューに浸けたパンを差し出すと、火トカゲは嬉しそうな鳴き声を上げる。 そんな感じで俺たちが食事を済ませて後片付けをしていると、家の外に不穏な気配を感じた。 1…2…3…4…5… 外にいる人間の気配を数える。 五人だ。囲まれている。 「チッ…こんな村まで探し当てたか」 まあ、ここに来たことをあの世で後悔させてやるだけだが。 この村の生活は気に入っていたのに、また出直しか… 「キュー…」 火トカゲが小さく声を上げた。 「お前は逃げろよ」 火トカゲの首をクルクルと撫でてから、俺は果物ナイフを手に取る。 ここでの生活で武器は持ちたくなかったから、用意していなかった。 「はあ、本当はもう殺したくないんだ」 でも、仕方がない。 俺は無意識に、布で隠してある左目を触った。 俺の左目は、眼球がない。 代償として、抉り出されたのだ。 この眼球を捧げて、俺は自由になったはずだったのに、結局こうやって命を狙われる生活が続いている。 左側の視界がないのはかなり不便だが、何とか慣れて動けるようになった。 ただ、戦闘行為をするのには、致命的な欠点だ。 俺はつい左側をカバーするような動きで戦ってしまうから、そこから隙ができてしまう。 手練れ相手では、少し厳しいだろうと思う。 ただ、この外にいる連中の気配からして、俺一人で十分にやれると感じる。 …来る。 外の連中が動き出した。 俺は家の中で迎え撃つことにした。 この家は村外れにあるが、外で派手な動きを見せると、村人が気付いてしまうかも知れない。 自己満足かも知れないが、出来るだけ、俺の正体を見せたくないのだ。 バン!と大きな音を立てて乱暴に扉が開かれる。 「探せ」 黒ずくめの格好をした二人が同時に入ってきて、片方がもう片方に指示する。 机の陰に潜んでいた俺は、素早く二人の前に出て、手に持った果物ナイフで指示した方の人間の喉を掻き切った。 「なっ!」 更に、驚いている指示されていた方の人間の首に果物ナイフを突き立てる。 二人は血を吹き出しながら、その場に倒れた。
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