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三人目が俺の背後から剣を抜いて襲い掛かってくる。
俺はしゃがみこむ動作で三人目の攻撃を避けると、そのまま立ち上がる動きで、顎の下から頭に向けて果物ナイフを刺し込む。
四人目が頭上から攻撃してきたが、三人目を盾にして防いで、押し返した。
その体勢が崩れた所を、心臓に向かって果物ナイフを突き立てる。
「これ以上っ!」
剣を振りかざしてきた五人目の剣筋を見切ってかわし、剣を持っている方の腕の付け根に果物ナイフを刺す。
痛みに顔をしかめた五人目と目が合う。
「俺が何者だったか、知っていて来ているんだろうな」
「無論!」
「わかっていてここに来たのは、勇気があるのか、無謀なのか」
剣を反対の手に持ち替えて攻撃してくるのを、果物ナイフで受け止めて捌く。
「帝国の意思だ!」
「…いい加減にしてくれないかね。
うんざりなんだよ」
五人目の喉元に果物ナイフを刺し、絶命させると、辺りは静かになった。
「さあ、片付けるか…」
果物ナイフを台所の流しに投げ入れて、家の中に転がった、無言になった五人を順番に担いで裏庭に運ぶ。
一つの山に積み上げたそれを見ながら、手をかざして体の奥からある力を呼び起こす。
「風化」
俺の体力がごっそりと削られるのを感じるのと同時に、目の前の山がサラサラと砂になっていく。
これは俺特有の能力だ。
物質であれば、全て長い年月が経ったように変えることができる。
風化や劣化の具合も自由自在だ。
ただ、生物には使えないから、使う前にただの物質にする必要がある。
この能力のせいで、俺は帝国に目を付けられている。
過去も、今もだ。
一般的に使える魔法に、このような魔法は存在しないのだそうだ。
原理はよくわからないのだが、おそらく魔法の種類の一つだろうというのが、帝国の魔導師たちの見解だ。
この力を使うと、程度によるが、とにかく体力を消耗する。
今のように、五人分の死体となると、既に立っているのがやっとの状態だ。
まだ家の中の掃除が残っているが、始末する順番からいくと、これが最優先だろう。
ただの砂の山が崩れていくのをしばらく見てから、俺はダルい体を引きずるように、家の中に入る。
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